四国の西南部、宇和海沿岸部からすぐにそびえ立つ「鬼ヶ城連山」の麓に松野町はあります。町には清流・四万十川に注ぎ込む二本の大きな川が流れ、そのうち一本の上流域には国立公園に指定されている渓谷が佇みます。
また、古くは土佐との交易を結ぶ宿場町として栄えた土地でもありました。
そんな地理的資源を活かす形で、商業や林業、農業や観光業など様々な産業の歴史がこの地に重ねられてきました。その多くが季節に寄り添う仕事として、それぞれのシーズン毎に賑わいを見せます。
ただ、人手が足りない程の繁忙期がある一方で、それ以外の期間に一定の収入を生むことが難しく、恒常的な雇用を遠ざけている面もあります。それは移住者にとっては定住への高いハードルとなり、高齢化や後継者不足に悩む事業者にとっては機会の損失に繋がります。
「ここに暮らしたい」と思った人が安心して移り住めて、「この仕事を残したい」と思う事業者を支えるにはどうしたらいいか?
その答えとして選んだのが「季節ごとの繁忙現場を複数繋ぎ合わせて、一年分の仕事として移住者へ提供する」というものでした。
私たち「森の国まつの事業協同組合」は、『この町ならではの仕事』を集めます。そして、それらの仕事を人材派遣事業者としてコーディネートし、安定した働き口を求める移住者へと繋ぎます。
派遣先となる現場は、いずれも地域に根差した現場であり、地域コミュニティの入り口でもあります。そこから広がる「里山的な温かい暮らし」にも期待しています。
そして、そんな私たち組合を通過点として、将来的には地域で「独立・起業」もしくは「特定企業への就職」を目指す夢を持った移住者を全力でサポートします。
当組合の仕組み
森の国まつの事業協同組合は、次の3者との連携で運営されています。
森のマルチワーカー
組合所属の正規職員。本人の希望や適性を元に年間のはたらき先と期間を決め、季節ごとにマルチワークを行う。
森のはたらき先
マルチワーカーたちの働く現場。組合員として組合に所属。繁忙期ごとに組合へ人材派遣を依頼する。
松野町役場
当組合が活動を行う地域の役場。マルチワーカーとして地域へ来る移住者の住まいや暮らしのサポートを主に行う。
当組合の方針
森の国まつの事業協同組合では「移住者自身の自己実現の足掛かり」となるべく、マルチワーカーとして働く期間を以下のように位置付けています。
1.『創業・就業』へ向けた準備期間
当組合は、この町に来てくれた移住者がゆくゆく起業や就職という道へ進むことで、地域産業全体が持続的に活性化していく未来を目指しています。
とはいえ、移住先でいきなり独立したり相性の合う企業と出逢うことはとても難しいです。
そこで私たちは、当組合でのマルチワークを単なる季節労働としてではなく、移住者が次の3つを得る機会と捉えています。
〘 安定/挑戦できる経済基盤 〙
固定月給、社会保障完備で安定した経済基盤を保証します。また、副業は「可」とし、興味を持った企業へのインターンや起業へ向けたトライアル、起業直後の収入不安のサポートを積極的に行います。
〘 地域の仕事を知る機会 〙
はたらき先は地域の事業者ネットワークの入り口です。創業を志す人にとっては市場に踏み込んだ現地リサーチに、就業を目指す人には生の企業情報に触れる機会となります。
〘 関係性作りの機会 〙
猫の手も借りたい繁忙期の助っ人は、心から歓迎されます。支える/支えられる関係の始まりです。ここで築き上げた関係性は、次あなたが何かに挑戦するとき、きっと活かされます。
※この他、はたらき先の業務に関連する資格であれば、その取得に係る費用のサポートも行います。
マルチワーカーは『無期雇用』の為、焦る必要はありません。ここに今どんな現場があって、そこはどんな環境か、あるいは、どんな需要があってどんな供給があるのか、足りてないものは何か。マルチワーカーの立場と期間を最大限生かしてじっくり探ってもらいたいと思っています。
2.ベストな『住まい』取得へ向けた期間
マルチワーカーとして移住した人へは、役場から「町営賃貸住宅」の斡旋が行われます。
ただし、この住宅は「3年間」の期限付きとなっています。これは、この間に「より本人に適した地区や住環境を見定めてほしい」という考えから設定された期間になっています。
小さな町にも地区ごとに異なった色が存在します。開けた盆地に静かな谷あい、小高い丘に風の通る川辺など。そこに暮らす人柄や地域柄も細かく、多様です。
また、古民家に惹かれる人もいれば、最新設備の家に暮らしたいと考える人もいます。
松野町では、まずは町の中心部に構えた「スタンダードな住空間」を移住者住宅として紹介します。そこでゆっくり時間をかけて、あなたを待っている土地や住まいを見つけてください。組合と役場が協力します。
一年間の働き方モデル
夏のアウトドアの現場と冬のカニカマ製造業の間に、春と秋でそれぞれ農業系の現場と接客のお仕事が挟まる形です。これはあくまでも一例で、一人一人とヒアリングを重ねた上で「あなたのマルチワークスタイル」をコーディネートしていきます。